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ジュズダマでアクセサリーを作ろう|昭和の野原で拾った天然ビーズ、子どもの指先が生んだ伝承の手仕事

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目次

■ あの硬い実が、宝石に見えた季節があった

夏の終わりから秋にかけて、水辺や道端の草むらをよく見ると、灰色がかった涙型の実が鈴なりになっている植物に出くわすことがある。

ジュズダマ、だ。

子どものころ、あの実を見つけたときの興奮は、今思い返してもなかなかのものだった。硬くて、ツヤがあって、穴まで開いている。「これ、そのままアクセサリーになるじゃないか」そう気づいた瞬間の感覚は、宝石を発見したときのそれに近かったと思う。実際には道端の雑草の実なのだが、子ども心にはそんな区別はどうでもよかった。

草花遊びや伝承遊びの中でも、ジュズダマのアクセサリー作りは少し特別な位置を占めている。完成したものを身に着けられる、という点で他の遊びとは一線を画していた。作って終わりではなく、作ったものを使える。この「実用性」が、子どもたちを夢中にさせた理由のひとつだったのかもしれない。

令和の今、自然素材のアクセサリーやハンドメイドの手仕事が大人の間でも静かなブームになっている。昭和の子どもたちが野原でやっていたことは、実はずっと先を行っていたのかもしれない、などと思ったりする。


■ ジュズダマとはどんな植物か|天然ビーズを宿す不思議な草

植物としての基本情報

ジュズダマ(数珠玉)はイネ科の多年草で、東南アジア原産とされる。日本には古い時代に渡来し、今では各地の水辺・湿地・田んぼのあぜ道などに自生している。草丈は1メートルを超えることもあり、夏から秋にかけて独特の実をつける。

実の正体は「総苞」と呼ばれる部分が硬化したもので、中には種子が入っている。熟すにつれて色が白から灰色、褐色へと変わり、表面に自然な光沢が生まれる。そしてこの実、最初から小さな穴が開いているのだ——糸を通してくれといわんばかりに。自然の造形の妙、としか言いようがない。

名前の由来と文化的な背景

「ジュズダマ」という名前は、仏具の数珠(じゅず)に使う玉に形が似ていることからきている。実際に昔は本物の数珠の材料として使われていた歴史もあり、単なる雑草ではなく生活に根付いた植物として各地で親しまれてきた。

朝鮮半島や中国でも同様の使われ方をしており、アジア全体に「ジュズダマでアクセサリーを作る」という文化の下地があったようだ。

採取の基本データ

項目内容
採取時期9月〜11月(実が熟して硬くなってから)
採取場所水辺・湿地・田んぼのあぜ・公園の水辺など
必要なもの熟した実・木綿糸や毛糸・縫い針
費用ほぼ無料(糸は家にあるもので十分)
難易度子どもでも取り組みやすい

■ 作り方と、あの日の記憶|指先に宿った集中力

【採取編】良い実の選び方から始まる

まず実を集めるところから、この遊びは始まっている。

熟した実は触るとカチカチに硬く、指で押しても凹まない。まだ若い実は柔らかく緑がかっており、乾燥後に割れやすいため避けた方が無難だ。色が灰色から薄茶色に変わり、表面にうっすら光沢が出ているものが使い頃のサインだ。

穴の状態も確認しておこう。完全に貫通しているものと、片側しか開いていないものがある。完全に貫通しているものの方が糸を通しやすい。一度に20〜30個ほど採れれば、ブレスレット一本分には十分だ。


【アクセサリー作りのステップ】

ステップ1:実を洗って乾燥させる 採取したジュズダマは土や汚れがついていることが多いので、水でさっと洗い、日当たりの良い場所で半日ほど乾かす。完全に乾燥させてから使うと、糸が通しやすくなる。

ステップ2:糸の長さを決める ブレスレットなら自分の手首周りより5センチほど長めに、ネックレスなら首周りに合わせて余裕を持った長さに糸を切る。木綿糸・絹糸・麻糸など、素材によって雰囲気がかなり変わる。

ステップ3:針を使って糸を通す 縫い針に糸を通し、実の穴に針を差し込んでゆっくり引き抜く。穴が小さい場合は細い針を使うか、千枚通しで穴を少し広げてから通すとやりやすい。急ぐと実が割れることがあるので、ここは丁寧に。

ステップ4:間隔を決めながら通していく ひとつひとつ等間隔に通していくのが基本だが、実と実の間にビーズや他の木の実を挟んでアレンジするのも面白い。松の実・小さな木の実・色付きのビーズなど、組み合わせ次第でオリジナリティが出る。

ステップ5:結んで完成 必要な数の実を通したら、両端の糸をしっかり結ぶ。ブレスレットは二重結びにしておくと外れにくい。結び目を実と実の間に隠すように工夫すると、仕上がりが格段にきれいになる。


🌾 体験談|妹のために作った、不格好なネックレスのこと

あれは小学5年か6年の秋口だった。

近所の用水路沿いにジュズダマが群生しているのを見つけたのは、学校帰りに寄り道をしたのがきっかけだった。友達の女の子に「これでアクセサリー作れるんだよ」と教えてもらい、「へえ」と気のない返事をしながら、こっそり実をポケットに詰め込んで帰った。

当時、3歳下の妹がアクセサリーに憧れていた。母親のネックレスをこっそり触っては怒られていた、あの妹のためになにか作れないかと思ったのが、正直なきっかけだった。格好よくもなんともないが、そういう動機だった。

家に帰って母親の裁縫箱から糸と針を借り、台所のテーブルで作業を始めた。最初は針が通らなくて、実を2個割ってしまった。糸の長さも計算が甘くて、一度解いてやり直した。1時間以上かかって、なんとかネックレスの形になったものを妹に渡したら予想以上に喜んでくれた。

「お兄ちゃんが作ったの?」という顔が、なんとも言えなかった。

その後しばらく、妹は本当にそのネックレスをつけて歩いていた。不格好な結び目も、多少ばらつきのある実の間隔も、子どもの目には関係なかったらしい。誰かのために作ったものが喜ばれる体験というのは、何十年経っても不思議と記憶に残るものだ。


⚠️ 採取・制作時に気をつけたいこと

  • 水辺での採取は足場が不安定なことがある。子どもだけで行かせないよう、大人が同行すること。
  • 農薬散布の可能性がある農地付近のものは使わないよう注意したい。
  • 完成したアクセサリーは小さな部品を含むため、乳幼児の誤飲に気をつけること。
  • 採取は必要な分だけに留め、植物の群生を荒らさない程度にとどめることを子どもに伝えたい。

■ 令和アレンジ|ジュズダマ遊びを現代の感覚でアップデートする

🌿 天然素材ミックスで「ボタニカルアクセサリー」に昇格させる

ジュズダマだけでなく、どんぐり・松ぼっくりの欠片・木の実・ドライフラワーなどを組み合わせれば、自然素材のハンドメイドアクセサリーとして大人の鑑賞にも十分耐えうる作品になる。秋の公園散歩で素材を集め、帰宅後に制作この一連の流れが、自然体験と創作活動をつなぐ豊かな時間になる。

📸 制作過程を丁寧に撮影してSNSへ

採取から完成までの過程を写真に収め、「自然素材アクセサリー」として投稿するコンテンツは、ハンドメイド好きのユーザー層に刺さりやすい。#ジュズダマ #ボタニカルアクセサリー #昭和の遊び #伝承遊び #ナチュラルハンドメイド などのタグを使うと、昭和世代とハンドメイド好きの両方にリーチできる。

🎨 ワークショップ素材として活用する

秋の地域イベントや学校の文化祭、親子向けの自然体験ワークショップで「ジュズダマアクセサリー作り」を企画すると、準備が手軽なわりに体験の密度が高い。材料費がほぼゼロで、参加者全員が完成品を持ち帰れるというのは、企画側にとってもかなりありがたい条件だ。

🧵 染色してカラーバリエーションを楽しむ

天然のジュズダマはグレーや薄茶色のシックな色合いだが、布用染料や草木染めで着色するとまったく別の表情になる。藍染め・茜染めなど伝統的な染色技法と組み合わせれば、工芸的な深みが加わる。総合学習や家庭科の授業テーマとしても面白い。

💻 植物観察アプリと組み合わせる

「PictureThis」や「GreenSnap」などの植物判定アプリを使いながらジュズダマを探す「デジタル植物ハンティング」は、スマホ世代の子どもたちの興味を引きやすい切り口だ。アナログな手仕事とデジタルツールの組み合わせが、自然観察の入り口として機能する。

🎁 「手作りの贈り物」文化を取り戻すきっかけに

お金を出して買ったプレゼントより、自分で時間をかけて作ったものを贈る——そういう文化が、昭和にはもう少し根付いていた気がする。ジュズダマのアクセサリーを誕生日や母の日のプレゼントにする体験を子どもたちに積ませることは、モノの価値の感じ方そのものを育てることにつながる。


■ ジュズダマ遊びが育むもの|天然ビーズが引き出す静かな力

指先の精度と集中力

硬い実に細い糸を通す作業は、集中しなければ先に進めない。テレビを消して、音楽も止めて、ただ無心に針を動かす時間その静けさの中で育まれる集中力は、他の遊びではなかなか得られない質のものだ。

自然を「素材」として見る感覚

道端の草の実がアクセサリーになる、という体験は、子どもの自然観を大きく変える可能性を持っている。「自然は見るもの」ではなく「自然は使うもの・活かすもの」という発想の転換は、環境への関心や創造的思考の芽生えにもつながる。

美的センスの自然な発育

何個おきに実を配置するか、どの色の糸を選ぶか——正解のない選択を繰り返す中で、自分なりの「きれい」の感覚が磨かれていく。アート教育でいうところの「審美眼の育成」が、野原の草の実を使って自然に行われていたのだ。

誰かのために作る喜び

自分用だけでなく、「誰かにあげたい」という動機で作ることが多いのもジュズダマアクセサリーの特徴だ。相手の好みを想像しながら色や形を選ぶ経験は、思いやりの心と想像力を同時に育てる。

「完成させる」達成感

途中でやめたら何も残らない。最後まで作り上げて初めて身に着けられる——この「完成させることへの動機」は、粘り強さや達成感の体験として子どもの心に刻まれる。


■ 道端の実が教えてくれた、手仕事の温かさ

ジュズダマは、買えない。

正確には売っていないこともないが、本来は自分で探して、自分で採って、自分で穴に糸を通すものだ。その手間のすべてが、完成したアクセサリーの価値になる。

店で買った完璧なビーズより、多少不揃いでも自分で拾った実の方が愛着がある——こういう感覚を子どものころに持てた人は、大人になっても「作ること」の喜びを忘れないでいられる気がする。

今年の秋、子どもの手を引いて水辺を歩いてみてほしい。 ジュズダマを見つけたら、「これでアクセサリー作れるんだよ」とだけ言えばいい。その先は子どもが勝手に夢中になる。そしてできあがった不格好な作品を、どうか大げさなくらい褒めてあげてほしい。その体験が、何十年後かに誰かのために何かを作る人間を育てるのだから。

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この記事を書いた人

昭和49年生まれ。団地の広場や空き地で、毎日のように友だちと遊び回って育った世代です。
ファミコンも好きだったけれど、やっぱり心に残っているのは、竹馬、メンコ、缶蹴り、ゴム跳び…あの頃の外遊びのワクワク感。

子どもたちがスマホやゲーム中心になっていく中で、
「昭和の遊びって、実は今の時代にもめちゃくちゃ価値があるんじゃないか」
と感じるようになり、休日は地域の子ども会で昔遊びを教えたり、会社のレクリエーションで昭和ゲームをアレンジして楽しんだりしています。

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