MENU

新聞タワーの遊び方|昭和の図工と学級活動を熱くした紙の建築勝負

  • URLをコピーしました!

目次

新聞紙だけで、どこまで高く積めるか

古い新聞紙を渡されて「これで一番高い塔を作ってください」と言われたとき、最初は簡単そうに思えた。

丸める、折る、立てる——いくつかやり方を試しているうちに、思ったより難しいことに気づく。高くなるほど不安定になる。土台が弱ければ途中で倒れる。紙の枚数は決まっている。制限時間が来たとき、隣のチームの塔が自分たちより明らかに高かった。

なぜあちらは高く積めたのか。どんな工夫をしていたのか。負けた後に相手の塔を観察すると、自分たちが思いつかなかった構造が見えてくる。

新聞タワーは、工夫の可視化だ。同じ材料を使っても、発想によって結果が全く変わる。その差が塔の高さとして現れる。だから面白い。


新聞タワーとはなにか|廃材が生む創造と競争の場

学校活動への定着

新聞紙を使った造形・建築遊びは、昭和の学校の図工や学級活動の場で広まった。新聞紙という手軽で安価な素材が、特別な材料なしに創造的な活動を可能にする点が教育現場で好まれた。

特にタワー形式の競い合いは、目標が明確で結果が目に見える数値として出るため、子どもたちの本気度を引き出しやすかった。学期末のお楽しみ会、理科や図工の発展活動、学級レクリエーション——様々な場面で繰り返し使われてきた。

昭和の子どもたちにとって、新聞紙は読み終わったら捨てるものではなく、遊びに変えられる素材として認識されていた。廃材を道具に変える発想は、当時の生活の知恵として自然に子どもたちに根づいていた。

新聞タワーの本質

新聞タワーは工学と創造性の遊びだ。

塔を高くするためには、重力と安定性の関係を理解する必要がある。土台を広く取れば安定するが材料を使う。細い柱を高く積めば高さは出るが倒れやすい。このトレードオフを制限された材料の中でどう解決するかが、チームごとの発想の違いを生む。

正解は一つではない。試してみないと分からない部分が多い。この不確実性が、遊びとしての面白さの核になっている。

基本データ

項目内容
材料新聞紙(枚数を制限して渡す)、テープ(ありかなしかでルールが変わる)
道具定規または巻き尺(高さ計測用)
人数1チーム2〜6人程度。複数チームで競う
場所室内の床の上か机の上
制限時間10〜20分程度
対象年齢小学生から大人まで幅広く

ルールと遊び方|シンプルな制約が創意工夫を生む

基本のルール

ステップ1:材料と制限を伝える

チームごとに同じ枚数の新聞紙を渡す。テープを使っていいか使えないかはルールで決める。テープなしの方が難易度が高く、発想の差が出やすい。テープありにすると安定した構造を作りやすく、高さの競争として盛り上がりやすい。

ステップ2:制限時間を決めて一斉スタート

制限時間は10〜20分が目安だ。短いほどプレッシャーが増して本気になりやすく、長すぎると途中で飽きが出やすい。タイマーを全員が見える場所に置くと、残り時間を意識した判断が生まれる。

ステップ3:制限時間内に塔を完成させる

手を離したときに自立している状態でなければ計測対象にならないルールにすると、安定性を考慮した設計が必要になる。時間が来たら全員が手を離し、倒れなかった塔の高さを計測する。

ステップ4:高さを計測して結果を発表する

最も高かったチームの塔を全員で観察する。どんな構造にしたか、どんな工夫をしたかをチームが説明すると、他のチームにとっての学びになる。負けたチームが相手の工夫に気づく時間が、この遊びで最も豊かな瞬間のひとつだ。


新聞タワーを高くする工夫

棒状に丸める加工が最も基本的だ。新聞紙は薄くて柔らかいが、きつく丸めると圧縮強度が上がり柱として機能する。丸め方が均一で密であるほど丈夫になる。

三角形の断面を作ると強度が増す。建築の鉄骨にトラス構造が使われるのと同じ原理で、三角形は力を分散させやすい。正方形や円形より三角形の断面の柱の方が同じ材料でも強くなることに、試行錯誤の中で気づく子どもが毎回いる。

土台を広くして頂点に向かって細くなるピラミッド型の構造は安定しやすいが高さに限界がある。細い柱を垂直に積み上げて高さを出す構造は高くなれるが倒れやすい。この二つの考え方をどう組み合わせるかが設計の核になる。


体験談|負けたとき、相手の塔を見て初めて気づいた

小学6年の学級活動だった。

担任の先生が「新聞紙10枚でタワーを作ってください。テープはなし」と言った。制限時間は15分。グループは4人。

うちのグループは新聞紙を筒状に丸めて積み上げていく方法を選んだ。3本の柱を立てて横に繋ごうとしたが、テープがないため繋げられなかった。結局2本の柱を寄り掛からせる形で何とか立てたが、高さは50センチほどで頼りなかった。

計測が終わった後、優勝したグループの塔を見て驚いた。新聞紙を細く丸めた棒を組み合わせてトラス状の構造を作り、地面から天井に向かうにつれて細くなっていた。テープなしなのに、棒同士を折り込んで固定していた。

「なんでこんな形にしたの」と聞いたら「橋の設計みたいにした」と言われた。そのグループに橋を趣味で調べていた子がいた。

その日から、建築物の写真を見るとき構造が気になるようになった。新聞タワーを負けた記憶が、そういう目を開いた。


気をつけておきたいこと

新聞紙の角や丸めた棒の端が鋭くなることがあるため、作業中に目や顔に当たらないよう注意する。倒れたタワーが落ちる際に他の人に当たる場合があるため、作業エリアに十分な間隔を設ける。競争の結果より工夫の過程を評価する声がけを大人がすることで、負けたチームが学びを得やすい雰囲気になる。


令和アレンジ|新聞タワーを現代の感覚でもっと楽しむ

重さを乗せる耐荷重チャレンジ

高さを競うだけでなく、完成した塔の上にどれだけの重さを乗せられるかを競う形式にする。文庫本を一冊ずつ乗せていき、倒れるまでの冊数を競う。高さと強度の両立を同時に設計する必要が生まれ、より深い工学的思考が要求される。

設計図を先に書くルールを加える

作業開始前に5分間の設計時間を設け、チームで設計図を紙に描いてから作り始める形にする。手を動かす前に考える習慣を促す。設計通りにいかない現実とのギャップが学びになる。設計図と完成品を並べて振り返ると、計画と実行の差について話し合えるテーマが生まれる。

異年齢チームで作る

低学年と高学年を同じチームに混在させると、説明と作業の分担が自然に生まれる。高学年が設計を考え、低学年が丸める作業を担当する——といった役割分担が子どもたち自身で決まっていく。教える側と教わる側の両方の経験が一回の活動で得られる。

企業研修・チームビルディングに使う

初対面の大人が集まる場で新聞タワーをやると、短時間でチームの動き方の傾向が出やすい。誰が先導するか、意見の違いをどう調整するか、時間のプレッシャーにどう対応するか——結果より過程の観察が研修の目的になる。振り返りの時間を設けると、チームダイナミクスについての深い対話が生まれる。

STEM教育の教材として活用する

新聞タワーは科学・技術・工学・数学の要素を自然に含む活動だ。材料の強度、構造の安定性、重心の概念、測定——これらを遊びの中で体験させてから授業で扱うと、概念の定着が早い。失敗と改良のサイクルが理科的思考の実践として機能する。


新聞タワーが育てるもの

創造的思考と工夫の可視化

同じ材料を使っても発想によって結果が変わることを、目に見える形で体験できる。創造性が抽象的な才能ではなく、具体的な工夫の積み重ねであることを実感できる。他のチームの発想を見て学ぶ経験が、創造性は模倣と改良から生まれるという理解につながる。

チームでの意思決定と合意形成

限られた材料と時間の中で、チームとして方針を決める必要がある。意見が分かれたときにどう合意を作るか、誰がどの作業を担当するか——これらを実践する場として機能する。うまくいかなかったときに誰かを責めるのではなく、何が問題だったかを考える習慣がここで育つ。

失敗から学ぶ実践的なサイクル

倒れたとき、なぜ倒れたかを考える。高くなれなかったとき、どこに問題があったかを分析する。このフィードバックのサイクルが、試行錯誤を通じた学習の基本形として体験される。言葉で教わるより、失敗して考える方が深く刻まれる。

廃材への新しい視点

捨てるはずの新聞紙が建築物になる。この体験が、廃材を素材として見る目を育てる。捨てる前に使い道を考えてみる習慣の芽が、この遊びから生まれることがある。


まとめ|新聞紙10枚が、チームの発想を映した

新聞タワーは材料の問題ではなく、発想の問題だ。

同じ枚数を受け取って、制限時間が同じで、ルールが同じで、それでも結果が違う。その差がどこから来るかを考えることが、この遊びの本当の面白さだ。

負けることの方が学びが多い遊びとして、新聞タワーはなかなかよくできている。自分たちの塔を見て、次に相手の塔を見て、その差を埋める方法を考える——この順番の体験が、学習の質を決める。

古い新聞紙が家にあれば、今日の午後に始められる。枚数を決めて、時間を決めて、一斉にスタートする。どんな塔が生まれるかは、やってみるまで分からない。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

昭和49年生まれ。団地の広場や空き地で、毎日のように友だちと遊び回って育った世代です。
ファミコンも好きだったけれど、やっぱり心に残っているのは、竹馬、メンコ、缶蹴り、ゴム跳び…あの頃の外遊びのワクワク感。

子どもたちがスマホやゲーム中心になっていく中で、
「昭和の遊びって、実は今の時代にもめちゃくちゃ価値があるんじゃないか」
と感じるようになり、休日は地域の子ども会で昔遊びを教えたり、会社のレクリエーションで昭和ゲームをアレンジして楽しんだりしています。

目次