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大波小波の歌詞|地域で変わる歌の不思議、昭和の長縄わらべうた

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目次

同じ歌のはずなのに、言葉が違った

引越し先の小学校で、長縄の時間に気づいた。

みんなが歌っている歌詞が、前の学校と少し違う。同じ大波小波のはずなのに、終わり方が違う。前の学校では「にゃんこのめ」だったのに、新しいクラスでは「あっぷっぷ」と歌っていた。

どちらが正しいのか聞こうとして、やめた。どちらも正しいのだと、なんとなく分かったからだ。

大波小波という歌は、出だしだけが全国共通で、後半はそれぞれの土地で育った言葉を持っている。正式な楽譜があるわけでも、決まった作詞者がいるわけでもない。子どもから子どもへ、口から口へ渡っていく間に、各地の言葉や発音が染み込んでいった。その結果、同じ名前の歌が各地に十通り以上の顔を持っている。

その多様さそのものが、このわらべうたの本質だと思っている。


大波小波とはなにか|歌詞が縄の動作と一体になったわらべうたの構造

歌と縄が一体である理由

大波小波は、歌詞の一語一語が縄の動作指示になっているわらべうただ。大波小波と歌いながら縄を揺らし、ぐるっとまわってと歌いながら縄を回転させ、ねこのめと歌いながら縄を止める。歌が縄の取扱説明書になっている。

この一体性が、文字による記録なしに何世代も伝わってきた理由だ。遊びが続く限り歌も消えない。歌が続く限り遊びも続く。この循環の強さが、大波小波を昭和から令和まで生き延びさせてきた。

成立の背景

正確な成立年代は記録に残っていない。縄跳び遊びが日本に広まった明治以降に歌の形が整い、昭和の戦後に子どもの人口が急増する中で全国に伝播していったと考えられている。

1950年には野口雨情作詞・中山晋平作曲の楽曲として「大波小波」という題名のレコードが残っており、このフレーズが昭和初期以前から広く認知されていたことが分かる。ただしわらべうたとしての大波小波は、この楽曲とは別の流れで民間に根づいてきたものだ。

基本データ

項目内容
種別長縄跳びのわらべうた
成立時期明治以降と推定。詳細は不明
作詞者不明。口承で伝わる
人数3人以上(回し手2人・跳び手1人〜)
地域差出だしは全国共通。後半は地域ごとに異なる

大波小波の歌詞|全国の言葉が揃う出だしと、枝分かれする後半

全国共通の出だし

どの地域でも最初の一節はほぼ変わらない。

おおなみ こなみ

この五文字だけが、日本全国の子どもたちの間で共通の出発点として機能してきた。大きな波と小さな波。縄が左右にゆっくり揺れる動きを、言葉が正確に表している。


関東・全国に広まった標準形

最も広く知られている形は、このような流れだ。

おおなみ こなみ ぐるっとまわって ねーこのめ

ぐるっとまわってで縄が揺れから回転に切り替わり、ねこのめで縄が足の間に止まる。歌詞の長さと縄の動きの速度がちょうど合うように作られており、この短さが記憶に残りやすい理由でもある。


地域ごとに異なる歌詞

同じ出だしから、各地でこれほど違う言葉に育っていった。

関西、主に大阪で歌われてきた形では、ぐるっとまわってではなくひっくりかえってと歌い、最後がにゃんこのめではなくあっぷっぷになる。福井県では最後がおっぱっぱになる。愛知県・中部地方では「かぜがふいたら まわせ」と続き、そこから郵便屋さんのおとしものへつながるバージョンがある。

東北地方のバージョンは特に長く、独特の言葉が連なる。

おおなみ こなみ かぜがふいたら やまよ ゆうびんはいたつ おかみのごよう えっさっさ ささまのこ さとまめこ こっぱのこ

ささまのこ、さとまめこ、こっぱのこという言葉は現代では意味をなさない。口から口へと伝わる中で元の言葉が変容し、音だけが残ったものだとされている。呪文のように響くこの一節を子どもたちが大声で歌っていた理由は、意味ではなく音の面白さにあった。

山形県置賜地方には船頭さんが登場するバージョンも記録されており、地域の生活や文化が歌詞に染み込んでいった痕跡として興味深い。


ねこのめという言葉の意味

最後に出てくる「ねこのめ」という言葉を不思議に感じた人は多いはずだ。

猫の瞳孔は光の量によって縦に細くなったり丸く広がったりと変化する。この形の面白さが、ぐるっとまわるイメージと結びついて歌詞に入ったとされている。遊びの動作としては、跳び手が足を大きく左右に開いて縄を足の間に挟んで止める形が、猫の瞳孔の縦長の形に見立てられた。

怖い由来や暗い意味はない。ただ、猫の目の形への子どもらしい着目が言葉になった。


遊び方と、あの日の記憶|縄が止まった瞬間の静寂

基本の進め方

回し手2人が長縄の両端を持ち、おおなみこなみと歌いながら縄を左右にゆっくり揺らす。跳び手はこの揺れに合わせて左右に軽く跳ぶ。

ぐるっとまわってで縄が頭上を越えて回転し始める。ここで難易度が上がり、跳び手は本格的なジャンプに切り替える。

ねーこのめで回し手が縄を地面に下ろして止める。跳び手は足を大きく左右に開き、縄を足の間に挟んでそのまま静止する。うまく挟めればクリア。縄に当たってしまったら交代になる。


引越し先の小学校で、歌詞が違うことに気づいた日

小学4年の春、引越しで転校した直後の話だ。

体育の時間に長縄が出てきた。回し手が歌い始めたとき、聞き慣れた出だしなのに後半が違うと気づいた。前の学校ではねーこのめと歌っていたところが、この学校ではあっぷっぷだった。

思わず隣の子に「えっぷっぷって何」と聞いてしまった。その子は一瞬考えてから「分からないけど、ずっとそう歌ってる」と言った。

どちらが正しいかを誰も知らなかった。でも縄は同じように動いていた。歌詞が違っても遊びは同じだった。

その日から「あっぷっぷ」という言葉を自分も歌うようになった。前の学校の「ねこのめ」の方が好きだったが、この学校の言葉もすぐ馴染んだ。言葉は場所と一緒に変わるものだと、あのときぼんやり学んだ気がする。


気をつけておきたいこと

回転する縄に顔を近づけないよう、特に低年齢の子どもには伝えておく。地面が濡れているときは縄が跳ね上がりやすく、足元も不安定になるため屋外ではコンディションを確認してから始める。回し手が疲れてくると縄の高さが変わりやすいため、こまめに交代する仕組みにしておくとリズムが保ちやすい。


令和アレンジ|大波小波の歌詞を現代の感覚で楽しむ

地域の歌詞を集める調査活動

家族や親戚に「大波小波って、どう歌ってた?」と聞いて回るだけで、地域ごとの歌詞の違いが集まってくる。祖父母世代と親世代で歌詞が異なる場合もあり、同じ地域でも時代によって言葉が変わっていた痕跡が見えてくることがある。言葉の伝わり方と変容を調べる自由研究のテーマとして使いやすい。

オリジナルの歌詞を作る

出だしはおおなみこなみで固定し、後半は自分たちで新しい言葉を作る活動は、わらべうたの構造を理解した上での創作として面白い。縄の動きと言葉のリズムが合うように考える過程が、言語と身体の関係を意識する機会になる。保育や学童での言語活動として取り入れやすい。

異なるバージョンを同時に歌って比べる

同じ長縄を使いながら、チームごとに違うバージョンの歌詞で歌い、最後に聞き比べる。なぜ言葉が違うのかを子どもたちが話し合う場になる。言葉の多様性を否定せず面白がる感覚を、遊びの中で育てる機会だ。

動画で歌詞と動きの対応を記録する

おおなみこなみで縄が揺れ、ぐるっとまわってで縄が回転し、ねこのめで縄が止まる——この歌詞と縄の動きの対応を動画に収めると、観ただけでルールが分かる映像になる。地域ごとの歌詞違いを複数動画で比較する形にすると、わらべうたの多様性を伝えるコンテンツとして面白い。

布やロープで室内版を作る

縄がない場合は長いタオルや布でも代用できる。床に置いてまたぐだけの動作にすれば、乳幼児でも歌に合わせて体を動かせる。歌だけを先に覚えてから縄に発展させる段階的な導入が、保育の場での取り入れやすさにつながる。


大波小波の歌詞が育てるもの

言葉のリズムを体で感じる感覚

おおなみこなみというフレーズには、言葉の音そのものに波のリズムが入っている。声に出して歌いながら体を動かす経験が、言葉のリズムと身体の動きを結びつける感覚を育てる。この感覚は、音読や朗読など言語表現全般の土台になる。

方言や言葉の多様性への気づき

同じ遊びでも地域によって言葉が違う。この発見は、言語の多様性を否定せず面白がる感覚の入り口になる。正しい一つの言葉があるのではなく、土地ごとに育った言葉がある——そのことを、難しい説明なしに体験できる。

音の面白さを楽しむ感受性

ささまのこ、あっぷっぷ、おっぱっぱ——意味より先に音が面白い言葉を大声で歌う経験が、言語の音響的な側面への感受性を育てる。意味のない言葉を声に出す楽しさは、詩や言葉遊びへの関心の原点になることがある。

歌と体を同期させる集中力

歌詞のどの部分で縄がどう動くかを覚え、その通りに体を動かす。この歌と体の同期は、音楽的なリズム感と運動の協調性を同時に使う。できるようになったとき、歌うことと跳ぶことが一つの感覚として合わさる瞬間がある。


まとめ|言葉が違っても、波は同じ形で来る

大波小波の歌詞は、地域によってこれほど違う。それでも全国の子どもたちが同じ縄を同じように動かして遊んできた。

出だしだけが共通で、後半は各地で別の言葉に育っていった。その分岐の数だけ、この歌を口にしてきた子どもたちがいた。あっぷっぷと歌っていた子も、ねこのめと歌っていた子も、ささまのこという呪文を叫んでいた子も、みんな同じ波の上にいた。

縄一本と声があれば始められる。歌詞はどのバージョンでも構わない。自分が覚えている言葉で、子どもと一緒に歌ってみてほしい。

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この記事を書いた人

昭和49年生まれ。団地の広場や空き地で、毎日のように友だちと遊び回って育った世代です。
ファミコンも好きだったけれど、やっぱり心に残っているのは、竹馬、メンコ、缶蹴り、ゴム跳び…あの頃の外遊びのワクワク感。

子どもたちがスマホやゲーム中心になっていく中で、
「昭和の遊びって、実は今の時代にもめちゃくちゃ価値があるんじゃないか」
と感じるようになり、休日は地域の子ども会で昔遊びを教えたり、会社のレクリエーションで昭和ゲームをアレンジして楽しんだりしています。

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