私の給食は瓶牛乳だった
工作材料が生まれる余地はなかった
正直な話から始めます。牛乳パックで工作、という発想が、私にはずっとぴんときませんでした。
私が小学生だった頃、給食の牛乳は瓶だったからです。銀色のケースにぎっしり詰まった重い瓶を、給食当番が二人がかりで運ぶ。紙のフタを爪で開けて、あのフタを集めてめんこの代わりにする。飲み終わったら、また瓶をケースに戻す。
そこに工作材料が生まれる余地は、まったくありませんでした。
あの頃の水鉄砲はマヨネーズの容器だった
そして当時の水鉄砲といえば、マヨネーズの空き容器です。
母親に、洗って返してね、と言われて渡された、あのぐにゃりとした容器。あれを握ると細い水が驚くほど遠くまで飛びました。夏の夕方、友達と裸足で追いかけ回して、また叱られる。それが我々の水鉄砲でした。
その後、給食の牛乳は四角い紙パックに変わりました。そして今、その紙パックは日本中の家庭でいちばん手に入りやすい工作材料になっています。
牛乳パックを使った水鉄砲の作り方を、失敗しないコツと一緒にまとめました。所要時間は三分。夏休みの工作にも、自由研究にも使えます。
水鉄砲の材料は、その時代の空き容器で決まる
竹の筒とマヨネーズの容器
もっと古い時代までさかのぼれば、日本の水鉄砲は竹製でした。
竹の筒に、布や紐を巻いた押し棒を差し込み、水を吸い上げて押し出す。祖父の世代なら、自分で削って作れた人も多いはずです。今でも各地の伝承遊び体験教室で作られている、正真正銘の伝統玩具です。
そして昭和後期、子どもたちが実際に手にしていたのがマヨネーズやケチャップの空き容器。あれは今考えても、実によくできた水鉄砲でした。
水鉄砲づくりは、その時代にいちばん身近な空き容器が何かで決まります。竹が身近なら竹。マヨネーズが身近ならマヨネーズ。そして令和の今、いちばん身近な空き容器は牛乳パックです。
牛乳パックが当たり前になるまで
道具のほうの歴史が、なかなか面白い。
戦後の学校給食で最初に出たのは脱脂粉乳でした。その後、瓶牛乳の時代が長く続きます。給食牛乳の瓶はもともと180ml。昭和45年、1970年頃に200mlになり、昭和50年、1975年以降に紙パックへと移行していきます。
そして瓶と紙パックの間に、忘れられない容器がありました。三角形のテトラパックです。
1964年、昭和39年の東京オリンピックで採用され、その便利さが認められて70年代以降に急速に広まりました。ところが三角錐という形状のせいで積み上げられない。配送中に転がって破損する。並べたときに数を数えにくい。そんな理由から、徐々に今の四角い紙パックに取って代わられていきました。
数字で見ると変化は劇的です。1970年代は全国の給食牛乳の約八割が瓶。それが1980年代には逆転します。
だから私の世代は、学校生活の途中で牛乳の容器が変わったという体験をしています。あれ、瓶じゃなくなったな、と思った、あの記憶。
運びやすく、数えやすく、空になったら開いて洗える。四角い紙パックは飲み物の容器として理想的だっただけでなく、日本中の子どもに工作材料を配り続ける仕組みでもありました。牛乳パック工作という文化そのものが、あの容器の副産物だったわけです。
用意するもの
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料 | 牛乳パック1リットル一個、太めのストロー一本 |
| 道具 | 目打ちまたはキリ、はさみ、耐水テープ |
| 飾り用 | 油性マジック、カラービニールテープ |
| 製作時間 | 約三分から五分 |
| 対象年齢 | 三歳ごろから。穴あけは大人が担当 |
| 費用 | ほぼゼロ円 |
ストローが要になります。細くて柔らかいものより、硬くて太いストローのほうがはっきり威力が出ます。タピオカ用の太いストローがあれば理想的です。
牛乳パック水鉄砲の作り方
洗って、しっかり乾かす
基本にして最重要。開いて中まで洗い、完全に乾かします。
牛乳の脂肪分が残っていると雑菌が繁殖して臭います。水遊びの道具ですから、ここは手を抜かないでください。
一度つぶして、飾りをつける
乾いたら、パックを一度つぶします。こうすると握りやすくなり、水がよく飛びます。折り目がついた状態で開き直すのがコツです。
このタイミングで、油性マジックやカラーテープで自由にデザインを。子どもが本気になるのは、たいていこの工程です。戦車風、動物風、何でも構いません。
やや下の部分に穴をあける
パックのやや下のほうに、目打ちかキリで穴を一か所あけます。
穴の大きさは、ストローの直径ぴったりに。ここが最大の注意点です。大きすぎると水が漏れて威力が出ません。小さめにあけて、少しずつ広げるのが確実です。
目打ちやキリは危険な道具です。小さな子の場合は大人が行うか、必ず手を添えて一緒に。カッターマットや雑誌を下に敷いてください。
ストローを差し込み、耐水テープで固定する
あけた穴にストローを差し込み、周りを耐水テープでしっかり固定します。
ここに威力を左右する秘密があります。ストローを、ほんの少し上向きに差し込む。
まっすぐより、やや上向き。これだけで飛び方が目に見えて変わります。放物線を描いて遠くまで届くようになります。
テープは水に強いものを。紙のマスキングテープでは、五分でふやけて水浸しになります。
水を入れて完成
上から水を入れれば完成です。つぶした部分を上から握ると、ストローから水がぴゅーと飛び出します。
握る力を変えれば勢いも変わる。子どもはここで必ず、もっと強く、と言い出します。
上の口の扱いは二通りあります。手で押さえて閉じる方法は補充がラクで、小さな子向きです。テープでしっかり密閉する方法は水が漏れず威力が出ますが、補充のたびにテープを剥がす手間があります。本気で飛距離を狙うなら後者です。
先に書いておきたいこと
牛乳パック水鉄砲は、耐久性も飛距離も市販品にまったく敵いません。
紙ですから、遊んでいるうちにふやけてきますし、何日も使えるものでもない。
それでいいのだと思います。三分で作れて、ゼロ円で、壊れたらまた作ればいい。これほど気楽なおもちゃも、そうありません。
安全に遊ぶために
顔や目を狙わない。これだけは遊ぶ前に必ず全員で約束を。
入れた水は飲まない。パックは飲料容器ですが、遊びに使った水は別物です。
目打ちとキリの作業は大人が担当し、子どもだけで扱わせない。濡れた床は滑るので、室内では絶対に使わない。
遊んだあとは乾かす。濡れたまま放置すると数日でカビます。汚れたり、ふやけたりしたら、潔く作り直しましょう。
そして、水をかけられるのが嫌な子は必ずいます。的当て中心の遊び方も用意してあげてください。
令和の遊び方と自由研究
的当てゲーム
空のペットボトルを並べて水で倒す。これだけで三十分は遊べます。
レベルを上げるなら、段ボールに穴をあけて点数を書く。大きい穴が三点、小さい穴が十点。紙コップをピラミッド状に積む。吊るした風船や紙皿を揺らして動く的にする。距離を一メートル、二メートル、三メートルに分けて、遠いほど高得点にする。
昭和の縁日の射的そのものです。血が騒ぎます。
水でお絵かき
アスファルトやブロック塀に、水で絵を描く。
数分で乾いて消えるので後始末がいりません。しかもコンクリートが濡れると色が濃く出るので、想像以上にはっきり描けます。
絵の具で色水を作れば、模造紙や古いシーツに向けて色を飛ばすアクションペインティングに発展します。乾かして飾れば、夏の思い出そのものが作品になります。
夏休みの自由研究にする
牛乳パック水鉄砲は、自由研究の題材として優秀です。変えられる条件がはっきりしているからです。
| 変える条件 | 調べること |
|---|---|
| ストローの太さ | 細い、普通、太い。どれがいちばん飛ぶか |
| 穴をあける高さ | 下のほう、真ん中、上のほう。水の勢いは変わるか |
| ストローの角度 | 水平、やや上向き、大きく上向き。飛距離はどうか |
| 水の量 | 満タン、半分、少しだけ。変化はあるか |
| 握る強さ | そっと、普通、全力。どれくらい違うか |
やり方は簡単です。地面にメジャーを置いて、それぞれ五回ずつ飛ばして距離を測り、平均を出す。表にして、棒グラフにする。
そして最後に、なぜそうなったのかを自分の言葉で書く。これで研究レポートになります。
予想を立て、実験し、結果を並べ、考える。この型を、水遊びをしながら体で覚えられます。しかも材料費はゼロ円。夏休みの終盤に慌てている家庭にも、自信を持って勧められます。
スローモーション動画で撮る
スマホのスロー撮影で、飛び出す水を撮ってみてください。
太陽を背にして逆光で撮ると、水しぶきが光の粒になります。これが驚くほどきれいです。
牛乳パック工作、手作り水鉄砲、夏休みの工作といったタグをつけて投稿すれば、同じ悩みを抱えた親御さんに確実に届きます。子どもの顔が映る場合は、保護者の許可を忘れずに。
チーム戦にする
段ボールで陣地を作り、相手の的を先に倒したら勝ちという陣取り戦。紙の旗を濡らされたら退場というフラッグ戦。ゴーグル着用で顔は狙わないと決めたバリア制。
顔は狙わないという一点を明文化してから始めてください。大人が一人、審判として入るのが理想です。
昭和と令和の水鉄砲王座決定戦
これは我が家でやって、想像以上に盛り上がりました。
牛乳パック、マヨネーズの空き容器、ペットボトル、市販の水鉄砲。それぞれの飛距離を測って比べます。
マヨネーズ容器の健闘ぶりに、大人のほうが驚きます。ほら、父さんの時代のはこうやって飛ばしたんだ、と語れる貴重な機会にもなります。
大人のレクリエーションとして
BBQやキャンプの余興に。各自一本作って的当てトーナメント。
地域の夏祭りや子ども会の屋台に。射的の代わりに水鉄砲的当て。
保育園や学童の製作活動に。材料費ゼロ円で全員分作れます。
材料が牛乳パックなので、大人数分をまとめて用意しやすいのが強みです。
作ったあとに何が残るか
作ったものがその場で動く
工作の最大の壁は、完成しても何も起きないことです。
その点、水鉄砲は違います。作った瞬間に握れる。握った瞬間に水が飛ぶ。成功も失敗も十秒でわかる。
しかも失敗したら、テープを貼り直せば直せる。作って、試して、直して、また試す。ものづくりの基本の輪が、たった数分で一周します。これほど教材として優れた工作は、なかなかありません。
なんで飛ぶんだろうが生まれる
握ると水が出る。強く握るともっと飛ぶ。ストローを上に向けると遠くまで届く。
このなんで、が子どものなかに自然に湧いてきます。押された水が逃げ場を求めて細いストローに集中する。それが圧力の話であることを、大人が横で一言添えるだけでいい。
理科の教科書より確実に頭に残ります。
道具の怖さを知る
穴をあける、ストローを差す、テープを巻く。細かい作業の連続です。
そして目打ちやキリという危ない道具を、大人と一緒に慎重に扱う経験。これは今の子どもたちに、意外と足りていないものかもしれません。
ゴミがおもちゃになる
飲み終わった牛乳パックが、十分後には水鉄砲になっている。
捨てるものと使えるものの境目は、自分の工夫次第で動かせる。この感覚を体験として持っておくことは、環境教育の百の言葉より効くと思います。
全員が同じスタートラインに立つ
高価な水鉄砲を持っている子も、そうでない子も、牛乳パックなら全員が同じ条件になります。しかも上手い下手が出にくい。
学校や学童の活動として優れている理由は、ここにあります。
冷蔵庫の牛乳はあと少しですか
今日の夕方にでも
竹の筒。マヨネーズの空き容器。そして牛乳パック。
日本の子どもたちは、その時代にいちばん身近な空き容器を、いつも水鉄砲に変えてきました。道具は変わっても、やっていることは何も変わっていません。
用意するのは牛乳パック一個とストロー一本。作業時間は三分。
今日の夕方にでも、子どもや孫と作ってみてください。庭でも、公園でも、ベランダでも構いません。
飛距離を測ってグラフにしたなら、それはもう夏休みの自由研究です。八月下旬に慌てるくらいなら、今日やってしまいましょう。
マヨネーズの容器も洗っておく
それから、マヨネーズの容器も洗って取っておいてください。
あれは、本当によく飛びます。
