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コマを回すコツとひもの巻き方、昭和の投げごまを親子でもう一度

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8分49秒。投げごまをひと投げして、回り続けた時間の最長記録だという。2013年に名古屋で出た記録で、小学4年から6年の部の子が打ち立てた。よーい、どんの声から、こまの胴が地面につくまでを計る。

昭和の正月に私が回したこまは、たいてい数十秒で首を振りだし、ころりと横になった。路地で鉄の輪をはめた木のこまを順に投げ、ぶつけ合って先に止まったほうが負け。かじかんだ指ではひもがうまく巻けず、巻き直しているうちに鼻の頭が赤くなった。

それでも一度だけ、こまが眠るのを見たことがある。投げたこまが首振りをやめ、背筋を伸ばしたまま、地面の一点でぴたりと静まった。胴の木目が溶けて一色になり、回っているのか止まっているのか分からない。速く回るこまが軸をまっすぐ立てたまま落ち着いた姿を、眠りごまと呼ぶ。あの数秒だけ、路地の物音がみんな遠のいた気がした。

こま回しは、ひもを巻き、投げ、引く。それだけの昔遊びだ。道具はこまとひも一本で足り、子どもは手のせや綱渡りの技に夢中になり、大人は級や段の認定に挑む。手首の返し方ひとつで、こまは五秒で倒れもすれば、何分も眠りもする。

正月の路地でひもを巻き直していた冷たい指先を覚えている人なら、こまが眠ったあの一瞬も、記憶のどこかにしまってあるはずだ。

目次

こまの歴史、こまつぶりから正月の投げごままで続く伝承遊び

高麗の名を背負って海を渡ったこま

こまは世界中で回されてきた。いちばん古いものは、エジプトから出土した紀元前2000年から1400年ごろの木のこまだとされる。

日本でこまと呼ぶのは、朝鮮半島の高麗を経て伝わったことにちなむという。遅くとも平安時代には大陸から渡ってきていて、宮城県名取市の清水遺跡や金沢市の戸水遺跡、藤原宮跡、平城京跡からは、7世紀から10世紀ごろのこまや、こまの形をした木製品が出土している。まじないに使われたと考える見方もある。

10世紀の辞書である和名抄は、独楽を日本の言葉でこまつくりと呼び、穴があいていると書いている。大鏡や宇治拾遺物語に出てくる名前は、こまつぶり。大鏡には、音を立てて回るこまに幼い帝が夢中になった話が残る。古い唐ごまは、竹の筒の上下を板でふさいで竹の心棒を通したもので、長さは12、3センチ。回すと穴から風が入って鳴った。伊勢の竹鳴りごまなどに、その面影が残るという。こまという呼び名が単独で文献に現れるのは、14世紀の太平記まで下る。

博多の鉄の心棒と、江戸の鉄胴ごま

江戸時代の元禄のころ、こまは大流行した。賭け事にも使われたため、売ることも遊ぶことも禁じるお触れがたびたび出ている。

同じころ博多で生まれたのが、心棒に鉄を使った日本で最初のこまといわれる博多独楽だ。1700年に博多から京へ上った初太郎という少年が曲ごまを披露すると、その流行は江戸にまで広がった。江戸浅草の奥山では、歯みがき粉や歯の薬を売りながら曲独楽を見せる松井源水が人を集め、幕末の1866年には13代目の源水が曲独楽を携えて、初めて西洋へ渡っている。

天保年間には、江戸浅草の玩具商、美濃屋文翁が作りだしたといわれる鉄胴ごまが現れる。木の胴に厚い鉄の輪をはめたこまで、またたく間に全国へ広まった。子どもたちは、鍛冶屋に頼んで鉄の輪を打ってもらったという。幕末になると、こまは曲ごまを除いてすっかり子どものおもちゃになり、男の子の遊びの中心を占めた。東北では明治から大正の初めごろまで、こまをずぐりと呼んでいた。

昭和の正月と、路地のけんかごま

こまは俳句では新年の季語になっている。もっとも、名古屋の日本独楽博物館の館長は、こまは本来は外で遊ぶものだと言う。冬に売る品の少なかったおもちゃ屋が正月にこまを並べるようになり、新聞やテレビがその季節感を定着させた、という見立てだ。

私にとっても、こま回しは正月にしか登場しない昭和の遊びで、こまそのものも親戚からお年玉と一緒にもらうものだった。手もとにあったのは、鉄の輪に刻印が二つ打たれたこまだ。胴輪ごまは大きさごとに刻印の数が変わり、二ツ目、三ツ目と呼ばれる。基本の大きさは一寸一分、およそ3.3センチで、半径が一分大きくなるたびに刻印が一つ増える。今、店で売られているのは三つ輪印のものだけだそうだ。

遊び方は、まわっている時間の長さを比べる寿命くらべと、こまどうしをぶつけるけんかごま。九州のけんかごまはもっと荒っぽく、鋭い芯のついたこまを相手のこまに投げつけて、たたき割ってしまう。けがをさせることもしばしばだったので、幼い子向けのこまも考え出されたという。

こまとひも一本、遊ぶ人数は問わない

道具は投げごまとひも一本。一人で黙々と練習でき、何人か集まれば寿命くらべや技の見せ合いになる。

こまの仲間は幅広い。指でひねるひねりごま、心棒を両手のひらでもむもみごま、持つ部分と回る部分が分かれた糸引きごま、むちでたたいて回すたたきごま。穴から風が入って鳴る鳴りごまもあれば、雪の上でも回せるように工夫された青森のずぐりもある。日本独楽博物館には、海外60数カ国のこまを含めて約2万点が集まっている。正月の路地で回していたのは、このうち、ひもを巻いて投げる投げごまだった。

コマを回す手順、ひもの結び目から投げ方まで子どもと一緒に

投げごまは、結ぶ、巻く、持つ、投げる、引くがそろってはじめて回る。こま回しの協会が勧めるやり方を軸に、順にたどってみる。右利きの手順なので、左利きなら左右を入れ替えてほしい。

ひもの端に結び目を作って、芯棒にかける

  1. ひもの端から5ミリから10ミリほどのところに結び目を作る。
  2. こまの上側に出ている芯棒に、その結び目をひっかける。
  3. 結び目が芯の根元にきちんと収まっているかを確かめる。

初めのうちは、ひきとけ結びで大きめの輪を作って芯棒にかけるやり方もある。輪が小さいと、こまが着地したときにひもが芯棒から抜けず、そのまま止まってしまう。

根元は固く、外へ行くほどゆるく巻く

  1. こまを横に向けて持ち、まず芯棒にひもを2回か3回巻く。
  2. 芯棒の根元あたりは、しっかり力を入れて巻く。
  3. 胴の外側へ近づくにつれて、少しずつ力を抜いて巻いていく。

きつく巻きすぎると、ひもが盛り上がって重なり、きれいに巻けない。巻く向きは投げ方で変わり、右利きで引いて回すなら反時計回り、上から投げおろすなら時計回りに巻く、と説明しているこま屋もある。

中指にのせ、腰の回転で投げて、すばやく引く

  1. ひもの端を、薬指と小指のあいだに挟んでしっかり握る。
  2. こまを中指の上にのせ、親指と人差し指で軽く支える。親指は伸ばしておく。
  3. 足を肩幅ほどに開き、左足を一歩前に出して、ひざを軽く曲げる。
  4. こまを45度ほど外側に傾け、肘を伸ばして体の近くを通しながら、腰の回転で前へ投げ出す。
  5. 投げ出したら、ひもを胸元へすばやく引き戻す。

こまは水平のまま着地させると長く回る。上からたたきつけるのではなく、地面を滑らせるように送り出す。少年の私は上からたたきつけてばかりいたので、こまは跳ねて側溝へ転がり落ち、拾いに行く時間のほうが回っている時間より長かった。

どじょうすくいから綱渡りへ、手のせの技

地面で回せるようになったら、こまを手に移す技が待っている。日本独楽博物館が挙げる技には、こんな名前が並ぶ。

  • どじょうすくいは、地面で回るこまを指ではね上げて取る技。
  • ひもかけ手のせは、回るこまにひもを巻きつけ、はね上げて手にのせる。
  • つばめがえしは、前に投げたこまをすばやく引いて、投げた手に直接戻す。
  • つなわたりは、手から手へ、ひもの上をつたわせて移す。
  • ひものせは、縦に投げたこまを引き戻し、横向きにしてひもにのせる。

博物館の挑戦状は全部で11項目ある。投げごまは5秒以上回れば合格で、どじょうすくいは中指と人差し指ではね上げて手の上で5秒以上、つなわたりは反対の手まで渡して5秒以上。20センチほどのまとに入れる箱入れまで全部こなすと、免許皆伝書がもらえる。

投げる前に周りを見る、こま回しの約束

こまは思いがけない方向へ飛ぶ。投げる前に周りを見回し、これから投げると声をかけ、近くの友達が離れてから投げる。人のいない方向へ投げることを、最初に約束しておく。

回してよい場所も決めておきたい。鉄の芯のこまは床を傷つけるので、室内では回さない。コンクリートの上では芯が取れたり、木の胴が割れたりすることもある。土の地面や、こま回し用の板の上が向いている。ひもを振り回して遊ぶのも、近くの人の顔に当たるのでやめておく。

こま回しの令和アレンジ、ストップウォッチとスロー動画で眠りを測る

子ども向けには、手で回すこまづくりと記録会

小学3年の国語には、こまを楽しむという説明文がある。色がわりごまや鳴りごま、さか立ちごまなど、回し方も楽しみ方も違うこまが紹介されている。

東京の御蔵島の小学校では、この学習をきっかけに、3年生がひもを使わずに手で回したこまの時間を計り、46秒だった最高記録を1分10秒まで伸ばした。長く回るこまは、はじめ斜めに回り、しばらくするとまっすぐ立って回る、という共通点まで見つけている。ねじとナットで作ったこまで1分46秒を出した小学4年生は、重心が低ければ低いほど長く回るわけではないと、自分の手で確かめた。

家でも同じ記録会が開ける。手回しのこまを何種類か作り、家族で一人ずつ回して時間を書き出していく。いちばん長く回ったこまの形を見比べると、次に作るこまの設計図が自然に浮かんでくる。

スロー動画で見る首振りと眠り

スマホのスロー撮影は、こまの一生をまるごと見せてくれる。投げた直後のぶれ、首振りがおさまって眠りに入る瞬間、回転が落ちてみそすりのように軸が大きく回りだすところ。回るこまを上から撮った動画を50分の1の速さにして、首振りの向きを調べた中学生の研究もある。ふつうのこまは、回る向きと首を振る向きが同じになるという。

ストップウォッチを使えば、居間でもタイムトライアルができる。よーい、どんで投げ、胴が地面につくまでを計るのが記録会の決まりだ。こま回しの協会が残している記録には、手のせ1分35秒、ひものせ1分53秒というものもある。技は動画で覚えられる時代で、動画投稿サイトを見て技を身につけた沖縄の小学生が、全国大会の小学生以下の部で優勝したこともある。

段位と記録会と町工場、大人のレクリエーションのこま

こま回しは大人も楽しめるどころか、大人が本気で取り組める仕組みまでそろっている。2002年9月に発足した日本こままわし協会は、名古屋の日本独楽博物館に本部を置き、大会や記録会、級位と段位の認定試験を開いている。博物館は入館無料だ。

名古屋の天白公園で開かれた第1回のこままわし大会には、およそ250人が集まった。大会は続き、2025年9月には68回目を数えている。技の正確さを競う全日本こま技選手権大会は2013年に始まり、2025年3月で10回目。小学生以下の部では、くじで決まった技に挑み、一度失敗したら脱落という厳しい決勝が行われた年もある。

こまは町工場の腕比べにもなった。全日本製造業コマ大戦では、中小企業の社員や大学生、高校生が自作の金属のこまを持ち寄る。ひもは使わず指で回し、直径20ミリ以下、高さ60ミリ以下といった規定の中で、ものづくりの技を競う。

同窓会や地域の集まりなら、寿命くらべがいちばん手軽だ。投げる順を決めて一斉にストップウォッチを押し、最後まで回っていた人の勝ち。子どものころに路地で鳴らした人が、思わぬところで眠りごまを決めて拍手をさらうこともある。

手のせの一瞬と郷土ごまの棚、SNS向けの撮り方

写真なら、手のひらの上で回るこまを横から撮る一枚がいい。こまが手のひらに乗っている時間はわずかなので、連写で狙う。綱渡りは、ひもの上を移るこまを斜め上から追うと、技の難しさが伝わる。

集めた郷土ごまを棚に並べるのも絵になる。博多独楽、伊勢の鳴りごま、津軽のずぐり、佐世保のこま。形も色も土地ごとにまるで違い、並べただけで旅の地図のようになる。眠りごまの動画は、数秒だけ切り出すと、止まっているのか回っているのか分からない不思議さがよく伝わる。

こまが教える、倒れない理由と投げる体の使い方

こま一つとひも一本なら、小さな巾着ひとつで持ち歩ける。公園の土の上へ持って出れば、すぐに一投目が投げられる。

回っているから倒れない、こまの理科

こまが倒れないのは、回っているからだ。回る物には、同じ姿勢を保とうとする性質がある。これをジャイロ効果と呼ぶ。速く回るこまは軸をまっすぐ立てたまま静まり、それが眠りごまになる。回転が落ちて軸が傾くと、傾いたまま軸がゆっくりと円を描きはじめる。これが歳差運動だ。

地球も同じ動きをしていて、地軸がひと回りするのにおよそ2万6000年かかる。同じ力で回せば、重いこまは軽いこまより長く回り、大きなこまは回転が続いて安定する。ロケットや人工衛星にも、同じ原理を使った装置が積まれている。路地で眠ったあのこまの中に、宇宙の話までつながっていたわけだ。

足から指先まで、力を一本につなぐ

投げごまは、腕だけでは回らない。左足を踏み出し、腰を回し、伸ばした肘から手首へと力を送って、最後にひもを引く。足もとから指先までの動きが一本につながったとき、こまは水平に着地して長く眠る。どこか一か所が遅れるだけで、こまは傾いて跳ねる。子どもは失敗するたびに、自分の体のどこがずれたかを探しはじめる。

五秒の壁と免許皆伝、目標を一つずつ越える

5秒回れば合格、手の上で5秒、ひもの上で5秒。挑戦状の目標は、手を伸ばせば届きそうな高さに置かれている。一つ越えると次の技が見えてくる。級と段の認定は、その階段をさらに先まで延ばしたものだ。老人会の人たちに教わった埼玉の小学生は、こま回しはとても難しかったと感想を残している。近所の子も、難しいとこぼした翌日には、もう公園でひもを巻き直していた。

老人会の先生が、教室でひもを巻く

奈良県生駒市の小学校では、地域の老人会の人たちを招いてこま回しを教わった。小学1年の生活科には、昔の遊びに挑戦する単元を組む学校がある。宮城県の小学校の特別支援学級では、講師が利き手に合わせたひもの巻き方を教え、子どもたちが線香花火という技に挑んだ。ひもを巻く手順は、教わった子の手から、いつかまた次の子の手へ渡っていく。

次の正月を待たずに、ひもを一本巻いてみる

おもちゃ屋で投げごまを一つ手に入れたら、公園の土の上へ持っていってほしい。結び目を芯棒にかけ、根元は固く巻き、45度に傾けて腰で投げる。最初の目標は5秒。子ども会や学校の昔遊びの時間に持ちこめば、こまを回せる大人が一人いるだけで、その場が小さな道場に変わる。

いつか、こまが眠る。首振りがやみ、胴の模様が一色に溶け、地面の一点に静かに立つ。その数秒をそばで見た子どもは、たぶん大人になっても、あの静けさを手のひらのどこかに覚えている。

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この記事を書いた人

昭和49年生まれ。団地の広場や空き地で、毎日のように友だちと遊び回って育った世代です。
ファミコンも好きだったけれど、やっぱり心に残っているのは、竹馬、メンコ、缶蹴り、ゴム跳び…あの頃の外遊びのワクワク感。

子どもたちがスマホやゲーム中心になっていく中で、
「昭和の遊びって、実は今の時代にもめちゃくちゃ価値があるんじゃないか」
と感じるようになり、休日は地域の子ども会で昔遊びを教えたり、会社のレクリエーションで昭和ゲームをアレンジして楽しんだりしています。

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