カコン、カラカラカラ。ペットボトルのピンが倒れて床を転がる音は、ボウリング場の重たい響きよりずっと軽く、どこか間の抜けた調子です。一投ごとに上がる歓声のほうは、本物のレーンに少しも負けていません。10本まとめて倒れた瞬間には、見ていた家族からいっせいに拍手。
手作りボウリングは、空のペットボトルを10本並べ、新聞紙を丸めたボールを転がして倒す遊びです。材料はほとんど家にあるもので足ります。作るところから家族で取りかかれて、幼い子と祖父母が同じレーンで点数を競えるのもうれしいところ。
昭和の街角には、屋上に大きなピンの模型を載せたボウリング場が建っていました。家族で出かけたレーンで、ストライクの音に思わず隣の人と手を叩き合った覚えがあるなら、この遊びの楽しさは説明するまでもありません。昭和を知る世代には懐かしく、生まれたときからペットボトルが身近にある子どもには、捨てるはずの容器がおもちゃに変わる遊びです。
手作りボウリングの作り方
そろえる材料
- ピンにするのは、同じ形の空のペットボトル10本。家の中なら500ミリリットル、広い部屋や体育館では1.5リットルが扱いやすい大きさです。
- 重りには水かビー玉を使い、色をつけたいときは食紅を少し用意します。
- ふたを留める接着剤と、飾りにする色違いのビニールテープ、番号を書く油性ペンもそろえておきましょう。
- ボールの材料は、古新聞が何枚かあれば十分。
- 投げる線やピンの置き場所の目印には、マスキングテープを1巻き。
- ピンの後ろに立てる段ボールも1枚あると助かります。
遊ぶ人数に決まりはありません。1人で自分の記録に挑むのもよし、大人数の日はピンをもう1組作ってレーンを2本に。順番待ちの列が半分になります。
ペットボトルでピンを作る
- ラベルをはがし、中を水ですすいでおきます。
- 色をつけるなら、食紅を少し溶かした色水を先に作っておきましょう。
- 水は底から2センチほどが目安。増やすほど倒れにくくなるので、遊ぶ人に合わせて加減してください。
- 水の量が決まったら、ふたをきつく閉めて接着剤で留め、上からビニールテープを巻いておきます。水がもれにくくなり、ビー玉を入れたピンも小さな子の手では開けにくくなります。
- 胴にテープで模様を入れ、油性ペンで1から10の番号を書いたら完成。
水の量で変わるのは、倒れやすさだけではありません。空のピンはカランと軽い音、水を入れたピンはゴトンと重い音を立てて倒れます。量を変えて何本か作り、音を聞き比べるのも工作の楽しみ。
新聞紙を丸めてボールにする
- 新聞紙を1枚くしゃくしゃに丸めて、芯を作ります。
- 別の新聞紙で芯を包んでは押し固める作業を、両手で持てるくらいの大きさになるまでくり返しましょう。
- 仕上げにビニールテープを隙間なく巻くと、表面がなめらかになって床の上でよく転がります。
新聞をとっていない家なら、広告のチラシを丸めても作れます。家にあるボールを使ってもかまいません。幼い子には空のピンとスポンジのボール、年上の子には水を入れたピンとバレーボール。組み合わせに迷ったら、このあたりからどうぞ。
廊下や居間にレーンを引く
レーンには、段差やでこぼこのない平らな床を選びます。フローリングの部屋や廊下がうってつけ。投げる位置にマスキングテープで線を引き、先頭のピンまでは3メートルほどから試してみてください。小さな子の番には、手前にもう1本引いた線から投げてもらいます。
ピンは先頭に1本、その後ろに2本、3本、4本と並べ、全体を正三角形の形にします。すき間はボトル1本分ほど。並べ直しで迷わないよう、床に小さな印をつけておくと楽です。
ピンの後ろには段ボールを1枚立てます。ボールが家具の下へ転がりこまなくなり、ピンが壁に当たるゴツンという音もやわらぎます。
手作りボウリングの遊び方と点数の数え方
1フレームは2回まで転がせる
- 投げる順番は、年の小さい子から。待ちくたびれて途中で抜ける子が出にくくなります。
- 線の後ろから、ボールを床に沿わせて転がします。上から放り投げるのはなし。
- 倒れたピンだけを片づけ、残ったピンをねらってもう一度転がします。ここまでが1フレーム。
- 倒れた本数を紙に書き、ピンを並べ直したら次の人の番です。
点数の計算がまだ難しい子と遊ぶ日は、投げる回数だけ決めて、倒れた本数を足していくだけでも十分に盛り上がります。
ストライクが出たら次の2投を足す
本物のルールでは、1ゲームは10フレーム。1回目で10本すべてを倒せばストライク、2回で倒しきればスペアです。ストライクのフレームは10点に次の2投で倒した本数を足し、スペアのフレームは10点に次の1投の本数を足します。
1フレーム目がストライクで、2フレーム目に3本と5本を倒せば、1フレーム目は18点。7本と3本でスペアを取り、次の1投で4本倒したときは、そのフレームが14点になります。10フレーム目だけは特別で、ストライクを出せばあと2回、スペアを取ればあと1回投げられます。全部ストライクなら最高の300点。
紙に10個のマスを書き、ストライクはバツ印、スペアは斜めの線で書きこみます。本物のスコア表と同じ書き方です。
遊ぶ前に決めておく安全の約束
レーンの先と左右に、テレビや割れものがないかを最初に見ておきましょう。ピンを直す人は1人に決め、その人がレーンから出てから次の人が投げる決まりに。床に水がこぼれたら、すべらないうちにふき取ります。
重りにビー玉を入れたピンは、遊ぶ前にもう一度ふたを確かめてください。消費者庁も、子どもが飲みこむおそれのある物は目と手の届かない場所に置くよう呼びかけています。遊び終えたらピンとボールの数を数え、家具の下に転がったままのものがないかを見て片づけは終わり。
昭和の遊びとしてのボウリング
幕末の長崎から昭和のブームへ
ボウリングは外国から伝わった遊びです。日本の子どもが代々受け継いできた伝承遊びとは、成り立ちが違います。
日本で記録が確かめられるいちばん古いボウリング場は、幕末の長崎にありました。外国人居留地で発行されていた英字新聞に、ボウリングのできる社交場の開店広告が載ったのです。6月22日がボウリングの日とされているのは、この広告の日付にちなんだもの。
広く遊ばれるようになったのは戦後のこと。ピンを機械が自動で並べ直すようになると、ボウリング場は全国で一気に増えました。昭和40年代の半ばには女子プロボウラーがテレビの人気者になり、ボウリングの番組がいくつも放送され、2時間、3時間の順番待ちが出るボウリング場もあったと伝えられています。当時の記録を読むだけで、縁日の夜のようなにぎわいが聞こえてきそうです。
石油危機をさかいに、増えすぎたボウリング場は急に数を減らしました。ブームのさなかを大人として過ごしたのは、私より上の世代です。
家や学校で遊んだボウリングごっこ
昭和の子どもがいつごろから家でボウリングをまね、何をピンに使っていたかについては、はっきりした記録が見当たりません。
私が思い出すのは、空き缶や空き箱を廊下に立て、ゴムまりを転がすだけの昔遊びです。倒れたら数えて、また立てるのくり返し。子ども会の集まりや学校のお楽しみ会のように人が集まる場所でも、床が空いていればすぐに始められました。
今の手作りボウリングでおなじみのペットボトルも、ボウリングブームのころにはまだ出回っていない容器でした。手のひらに収まる小さなペットボトルが店に並ぶようになったのは、平成に入ってからのことです。
何を立てるかは、その家にある物しだい。並べて、転がして、倒す。やることは昔も今も変わりません。
令和アレンジで広がる手作りボウリング
小さな子ども向けの坂道と景品
ボウリング場の中には、重い球を持てない幼い子のために、ボールを転がす台を導入したところもあります。家では、段ボールを箱に立てかけた坂がその代わり。坂の上にボールを置いて手を離すだけで、まだうまく投げられない子の球もピンまで届きます。ピンを6本か3本に減らし、小さな三角形に並べ直せば、全部倒れる場面がぐっと増えます。
景品は、倒した本数がいくつでももらえる形に。縁日の射的の棚のように、本数ごとに違うシールを並べておきます。0本だった子にも参加賞を1枚。外れた一投のあとでも、笑って次の順番を待てます。
スコアアプリで点数をつけて動画も撮る
点数の計算は、スコアアプリやウェブの計算ツールに任せる手もあります。投げるたびに倒れた本数を入れるだけで、ストライクやスペアのボーナスまで足した合計が出てくる。このボーナスの足し算は、プログラミングの練習問題にも取り上げられている題材。コードを書くのが好きな子は、家族の点数を計算するプログラムを自分で組むところから遊べます。
動画を撮るときは、ピンの斜め横にスマホを低く置き、レンズを投げる人のほうへ向けます。倒れたピンが届かない距離をとるのを忘れずに。転がってくるボールを正面に近い向きからとらえた映像は、投げる人の後ろから撮るのとは迫力がまるで違い、ピンがはじける音もはっきり入ります。家族の歓声を録音しておき、ストライクのたびにスマホから流す。手作りのファンファーレです。
大人も楽しめるレクリエーションの工夫
いすに座ったまま転がす形にすれば、立ち続けるのがつらい人も最後まで同じゲームに加われます。ピンは空にして軽くし、投げる線を近づけておくのがこつ。ピン1本ずつにひもを結び、後ろでひとつにまとめておくやり方もあります。ひもをたぐり寄せるとピンが元の並びに戻るので、しゃがむ回数が減らせます。
テーブルの上で遊ぶなら、ビー玉を使った卓上版を。トイレットペーパーの芯で小さなピンを作り、ビー玉を指ではじいて倒します。ピンの後ろについたてを立てておくと、ビー玉が床へ落ちません。会社や地域の集まりでは、数人ずつのチームに分かれて合計点を競う形がおすすめ。投げるのが苦手な人には、仲間の一投に声をかける役があります。
SNS映えする色水と光るピン
食紅で色を変えたピンを、列ごとに赤、黄、緑、青と並べてみてください。屋台のかき氷のシロップを並べたような色合いになります。
部屋を少し暗くする日は、水を入れないピンに、口から入る細いライトを差しこみます。ふたをテープでしっかり巻いて、小さな子が中の電池に触れないようにしておくこと。足もとが見えるくらいの明かりを残した居間で、ぼんやり光るピンが10本並ぶ姿は、祭りの提灯の列のよう。昭和レトロやアナログな遊びが好きな若い世代にも、写真に残したくなる景色です。
撮るなら、1投目の前に10本そろった姿を正面から。投稿には、ピンとレーンだけが写る構図を選びます。家の中の様子も家族の顔も出さずにすむ撮り方です。
手作りボウリングで身につくこと
狙って転がす体の使い方
ボールを転がすときは、ひざを曲げて腕を後ろへ引き、前へ送り出しながら手を離します。狙う向きと力の加減を、ひとつの動きの中でそろえなければなりません。向きがずれれば、端のピンをかすめるだけ。勢いが足りないと、ピンの手前で止まってしまいます。何投かするうちに、子どもは立つ位置や腕の振り方を自分で変え始めるもの。ピンを並べ直すたびにしゃがんでは立つ動きも、家の中ではちょうどいい運動です。
水の量も決まりも子どもが考える
ふたを留める前に、1本ずつ水を足したり減らしたりして、残りやすいピンを探す。色の並べ方を決める。作る段階から、子どもが自分で選ぶ場面が続きます。
赤いピンは2点。股の間から後ろ向きに転がす回。レーンの途中には段ボールのトンネル。こうした決まりは、頼まなくても子どものほうから出てきます。学校の取り組みの中にも、学級ごとに自分たちのルールを作ってよいとしているものがありました。
本家のボウリングにも、9本のピンで遊ぶ形がアメリカで賭け事に利用されて禁じられ、1本足して10本にしたという話が伝わっています。話のとおりなら、ピンの数まで遊ぶ人の事情で変わってきたわけです。
本数を数える声が家族の会話になる
投げる人の名前を呼ぶ声、倒れた本数を数える声、ストライクを喜ぶ声。待っているあいだも、口は休む暇がありません。ピンが1本だけ残った一投には、惜しい、と誰かの声が飛ぶ。ピンを直す係を1ゲームごとに交代すれば、投げていない人にも役目ができます。特別支援学校の小学部向けに作られたボウリングの教材でも、先生や友達との関わりを楽しむことや、手を借りながら準備と片づけをすることがねらいに挙げられていました。
点数をつけるときは、子どもが算数を使う番です。ストライクを出したフレームの点数は2投先が決まるまで空けておき、あとから戻って書きこむ。表の上を行ったり来たりする足し算を、遊びながら何度もくり返すことになります。ボウリング場に通ったことのある祖父母には、バツ印と斜めの線の意味を教える役をお願いしましょう。
廊下ひとつで始められる令和の遊び
暑さや雨で外に出にくい日でも、廊下が1本あればレーンになります。ピンとボールは箱ひとつにまとめて片づけられるので、狭い部屋でも置き場所に困りません。近くにボウリング場がなくても、思い立ったらパジャマのままで1ゲーム。箱ごと祖父母の家へ持っていけば、帰省先の廊下がその日のレーンです。
手作りボウリングは空きペットボトル集めから
次の資源ごみの日まで、飲み終えたペットボトルを捨てずに取っておいてください。10本たまったら家族で色を決め、1本目のラベルをはがすところから。学校なら、お楽しみ会の前に1人1本ずつ持ち寄るだけで、クラスの分のピンはすぐにそろいます。色決めまで子どもたちに任せると、作る時間も行事のうち。
完成した日の居間は、カコン、カラカラカラの音でいっぱいです。
